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2017年5月13日 (土)

白い花

 
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 しかし私が寄り添わなくても、こうして我が家の蜜柑の樹に花は咲く。
 可憐という字を形にしたら、きっとこんな白い花弁になる。
 ほんの1週間ほどの命は短い。

 大きなミスジクロアゲハが、ふらふらふらと樹の周りを飛び回っている。
 羽を休め産卵する葉はとっくに決めているくせに、それでももっと素敵な
 若い葉を探し選り好みするように、思わせぶりするように。
 蝶と蜜柑の樹の間には、明らかにコミュニケーションがある。

 モンシロもジャコウもアゲハも、おおよそ蝶の振る舞いはシャイだ。 
 そしてある日、ひと夏を待たず役目を終えた後の蝶は、地面で大勢の蟻に
 取り囲まれている。
 最初に失くなるのはキラキラしていたはずの羽の部分で、みる影もない。
 蟻はただ奴隷のように忙しく動き回り、蝶とともに蟻もまた誰かに
 使い捨てられる。捨てられた蟻をまた動いている蟻が運んで行く。

 彼らの命の長さは必要以上にはプログラムされていない。
 けれど遺伝子というワンタイムのパスワードを繰り返し使うことで
 子孫は長く遠くまで行くことができる。
 自分たちの命を延ばそうとする、することができるのはヒトだけではないか。

 儚さを感じこそすれ、彼らにものの哀れさはない。
 約束通り、土へ還るからだろうか。
 花や蝶を美しいと感じるのは、ひとつは潔さにある。

 
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