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2018年2月18日 (日)

Iannis Xenakis

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 ル・コルビュジェの建築事務所で10年の間、設計の仕事をしながら
 現代音楽を創作していたイエリ・クセナキス。
 ルーマニア生まれのギリシャ系フランス人、アテネ工科大卒のエンジニア
 でもあったクセナキスが試みていたテーマは、自分の考える音楽を建築
 として可視化し、形にすることだった。

 クセナキスが設計を担当したという、このラ・トウーレットの祈りの場へ
 向かうための通路にあるそのグラス面は、五線譜のフォーマットを逸脱
 したかのような現代音楽を思わせる。

 そのグラスを手で敲くと、一枚づつ音の高さが異なるのです。
 現地で枚数を確認するのを忘れてしまったのですが、クセナキスの
 音楽理論に倣えばおそらくグラスの大きさは12種類、つまり12音階
 (平均律)あるはず。
 そして印象に残るのは、グラスが矩形の組合わせであること。
 すなわちモンドリアンスタイル。

 また一方で、それは教会のステンドグラスを想気させる。
 かつて訪れたイスタンブールのアヤソフィア聖堂には4世紀頃の
 透明なグラスがあって、それが世界最古のひとつだった。
 その後加工技術が発達し、中世のロマネスクやゴシック時代には
 ステンドグラスとして着色と模様による華美な装飾が長く長く続く。
 そんな装飾を排除したモダニズム建築の透明なグラスは、肥大化する
 宗教へのアンチテーゼだったと同時に、無垢な白、透明であるべき
 原点回帰へのメッセージだったのではないか。

 もうひとつは図書室に置かれたル・コルビュジェがデザインしたという
 白い椅子。かつてユトレヒトを訪れて眺めた、かのシュレーダー邸の
 ヘリット・リートフェルトによる「赤と青の椅子」と同じフォルムです。
 しかしてル・コルビュジェは白、伽藍は白くあるべきと。
 それらがリートフェルトの引用、そしてモンドリアンへのリスペクトと
 考えると興味深い。

 ル・コルビュジェはカソリックだったが、無神論者でもあった。
 ロンシャンの礼拝堂、ラ・トゥーレット修道院、フィルミニの教会。
 有名な三部作、宗教団体のリクエストを引き受けるのは人生の後半、
 妻のイボンヌとお母さんが亡くなってからだ。彼のお墓に自ら描いたのは
 海と空の水平線であって、十字架ではない。

 クセナキスは、物理のブラウン運動から作曲のヒントを得るような
 言わば音工的感性を持っていて、建築と音楽の二足の草鞋を履いていた。
 今風に言えばダブルメジャー、はたまた二刀流。
 勿論クライアントに言われたことをやるだけの、建築事務所のいち
 アシスタントではなかった。

 優れた集団には、また素晴らしい才能が惹き寄せられ集まる。
 Great minds think alike.

 建築をオーケストラに喩えれば、クセナキスはファーストヴァイオリニスト
 かピアニスト。ル・コルビュジェはプレーヤーを惹き立たせ、その才能を
 引き出せる名コンダクターでもあったのだろう。

 先の白い椅子も矩形グラスもインストゥルメント、言わば楽器であって
 ハイブリッドというよりは、アレンジメントとコンダクティングのための
 構成要素なのだ。

 そんなわけで、ようやく訪れたラ・トゥーレット。感無量です。
 私は、そのグラスに手を当て、そしてクセナキスの声を聴く。
 その手で敲けよ、さらばその波動は手を伝い、耳を啓き脳へと響き、
 また己れの心に還るだろう、と。


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